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2005年11月27日

一本の杖  (関谷 京子)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

君に一本の杖をあげよう・・・

誰かが書いた詩の一節が脳裏をよぎる。

私のあらたな病は、もう10ヶ月目を迎える股関節痛である。
痛み始めた頃は、そう酷くもなかったので普通を装っていられた。
が、今や車の乗り降りさえ「ウゥーーー」と唸りながら
何十秒とかかるようになってしまった。

一歩ごとに歩けばやってくる。
座るときも立つときもやってくる。
階段なんて、婆さまさながら手すりに頼り、坂道なんて上るも辛し。
足を変に向けようもんなら、「ギャオー」と顔から火を噴く情けなさだ。

先日など初めて行くお蕎麦屋さんの入り口で、
ちょっとつまずいただけで、激痛が走り、ガラス扉に体当たりし、
ドアを壊したかと思うほどの爆音を立ててしまった。
扉を開けるなりお客さん達全員の注目を浴びたのは、言うまでもない。
そして私は「いや、すみません。ちょっと足が悪いもんで・・」と
誰にともなくボソボソ言いながら、えっちらおっちらと席についた。
しかし、そのお陰で店員さんには一度で覚えて頂き、
以来、会話も常連そのものとなれたのは、楽しいことであった。

目覚めたときは足ごと1ミリとて痛みで上がらない。
ストレッチを十分してから起きあがるのだ。
整体も毎週のように受け始めてもう長い。
よほど、その前の廃人のように暮らした丸2年間の、
寝たきりに近い病気をしたことが筋を弱らせたせいだろうか。

そこで、これまで私の美意識がかたくなに許さなかった、
杖を購入することを決意した。
こういうときにネットは大いに貢献してくれ、大変便利である。
それにしてもどれもこれも爺ったらしいものばかりだ。
たまに柄物がないではないが、白地に淡い薔薇の花が描かれているような、
まるで一昔前のジャーかポットみたいだ。
(好みじゃないな)
スケルトンもあったが持ち手の所だけで、他は茶色だ。
(やはり好みではない)
それでも、あきらめずに探していたら、
まあなんと綺麗な発色のものが目に飛び込んできた。
オーク材の一本木で出来た丈夫そうな出来のものが、
・・・とある店に置いてあるらしい。
それは鮮やかな数色から選べるもので、私は迷うことなく
ピンク色に金の透かし彫りがポイントになった物を注文した。
勿論、背丈にも長さを調節してくれてのお届けだ。
あぁ、待ち遠しい10日間の始まりだ。

あれならそうは痛々しく見えないかも知れないし、黒いお洋服などで
おしゃれをして綺麗なピンクの杖を持てば、色がポイントになって
アクセサリー代わりになるやも知れぬ・・・と、想像を膨らませていた。

ところがだ。
我が家に届くなりおしゃれをして美容室まで行ったとき、
全面鏡に映った我が身を見て愕然とした。
アクセサリーどころか、返ってピンク色が目立ち、杖以外の何者でもなかった。
ショック・・・(ついでに力士のような我が腹の厚みにも・・・)
ダブルショックである。

しかし、持ち手もしっくりともう馴染み、
“なんでもっと早く杖を使わなかったのだろう”と思うほどに、
身を支える時などえらく重宝するのである。
よーし!これで家にばかりこもっていた私も外出しやすくなる。
明日からリハビリ開始だ。
なるだけ歩く癖をつけなければ。

杖は杖だったけど、このピンクの杖は、
きっとわたしの強い支えとなってくれることだろう。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2005年11月27日 13:08

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