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2005年12月19日

結婚式に参列して (井手 一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

この年になると、いろいろと付き合いも増えて葬式や結婚式への参列が多い。
近年はとりわけ仏事の案内が増え、20代・30代の頃との違いを実感している。
間もなく一年が過ぎようとしているが、今年最後の参列は結婚式となった。
慶事で一年を締めくくれるとすれば幸いだが、
訃報はいつ飛び込んでくるか予測が付かないのも事実。(油断は出来ない)
余すところ2週間、平穏無事に過ごせる事を祈りながら、華燭の典に招かれた。

久し振りに「大江戸線」に乗ったなあ。
しかしこのネーミングは誰が考えたのか?
石原さん? あまりセンスが良いとも思えないが。
実は開業の際に名称を公募し、一度は「東京環状線」愛称「夢もぐら」
と決定したのだが、「環状じゃない」との石原都知事の逆鱗に触れ
いつの間にか「大江戸線」となったのです。
その路線は確かに環状部と放射部から成るのですがねえ・・・。
私なんか「夢もぐら」、結構いいと思いましたけど。
そんなことより、この路線は何故こんなに深く潜るのだろう。
一体電車に乗るまでに地下何階まで降りるのだ。(かなり深いよこれ)
そして電車が狭い、狭すぎやしないか。

東京の地下には、いくつも謎のトンネルが残っていて、
その一部を利用したのが大江戸線だと・・・誰かが言っていたような・・・。
戦時中にいくつも掘られたらしいとのこと。
だからこそ全ての地下鉄が、皇居の手前で極端に迂回するのも頷けるなあ。

かつて元麻布の善福寺で、月に5~6回司会を担当していた時に、
この路線はしょっちゅう利用していたので、とても懐かしい。
しかも今日のブライダルの会場の最寄り駅が、
当時と同じ駅「麻布十番」から徒歩数分の「三井倶楽部」だ。
へへへ、麻布十番って、日本にある唯一のフランス語の駅名ですって。
「アザブジュバーン」(フランス語風に読んでください)

とても懐かしいので善福寺に寄り道しました。



当時建設中だった、あのビルが完成し、思いっきり景観を損ねています。
何この形、とても馴染めないなあ。
この構造設計の担当は、一体誰なんでしょう?
(形が形なだけに・・・とても心配です・・・震度3でも怖そうな形だよね)

この近くには、素敵な万華鏡専門店があって、
時間つぶしに立ち寄ってつい購入しては、子供たちにプレゼントしていました。
ちょっと懐かしいので、立ち寄ろうと思っていましたが、
お茶しているうちに時間がなくなり慌てて三井倶楽部へ向かいました。



三井倶楽部は、オーストラリア大使館とイタリア大使館に挟まれるように
建っている、ルネサンス様式を基調とした宮殿作りの館です。
バロックやビザンチンと様々な建築様式が見事に調和している・・・
らしい、ホームページにそう紹介してあるのです。
(私が見ても、古くてゴージャスぐらいにしか思えませんので)
因みにオーストラリア大使館の対面に建つ、あるお寺の式場では
たまに葬儀の司会をしていましたので、こちらも懐かしい。

受付前の吹き抜けには、時節柄でしょうか、5メートルのクリスマスツリー。
この時点で、ご親戚の子供たちは大騒ぎをしていました。
クリスマスパーティと結婚式の違いが分かってないようです。



「どこからサンタが来るのかな?」
「来ないっちゅうの」
「プレゼントは?」
「ないっ!」
泣きべそをかいてる子もいましたが、
「ケーキは?」
「それは・・・あるっ!」
ホッとする子供たちでした。

室内の雰囲気は、ホテルなどとは違った落ち着きを醸し出していて、
アットホームなレストランウェディングに近い感じがしました。
定刻に、歴史を感じるような音色の鐘が静かに鳴って、新郎新婦の登場です。



「年の瀬のブライダル司会者は、暇な時期だからきっと上手い人だと思う」
そんな石川の言葉をまったく当てにしていなかった私は、
第一声を聞いて、「ホォー」と思いました。
語尾か上がらないし、口跡が綺麗。
もう少し抑揚を減らせば、もっとクオリティが上がるのに惜しい・・・。
しかし、石川よりは上手だな・・・と思ったのです。
(石川のブライダル司会は聞いた事がありませんけど)
技術がしっかりしているのが判るので安心して参列できると救われました。
これが下手な司会者だと、食事が喉を通らなくなります。
職業病でしょうね。
さすが三井倶楽部・・・良かった、良かった。

新郎が家内の遠縁に当たるのですが、来春4月にオープン予定の、
認知症などの要介護老人福祉施設を現在建設中だとのこと。
社会的にも素晴らしい仕事ですし、応援したいと思っています。
昨今のニュースでも、今後は認知症患者が急増との予測が出ていました。
受け入れ先が必要ですよね。

さて、披露宴のひと時、少しばかり間が空いた時間に、気分転換も兼ねて
歴史ある建物内の散策と・・・まあタバコを吸いに脱出しただけだけど。
で、2階に上がってみると、こんな感じでした。



その辺にいたスタッフに聞いて、新郎新婦の登場目線で写真を撮りたい
とお願いしたところ、笑いながら教えてくれたのです。
(結構うけてました)

これが2階から1階のロビーへ登場するときのスタンバイ地点。
きっとドキドキしてるんでしょうな。



これが踊り場付近からの目線でしょうか。
拍手に迎えられて、フラッシュを浴びて、どんな気分なのでしょう。
このときばかりは「高いとこ目線」ですね。



係りの女性が面白がって
「新婦役やりましょうか?」だって。(いらんちゅうに)
ドラマでは新郎役で確か2~3回経験があるはずなんだけど、
当時とはまったく違った父親目線で物事を考えている自分がいました。
自分の娘も、早ければ10年以内に・・・。
他所様の結婚式に招かれるたびに、そんなことばかり考える年齢なんですね。

祝電の読みは、やはり葬儀とはまったく逆の表現。
私は、トーンやテンポやテクニックが気になりますが、
当然のことながら他の参列者は、発信人が気になる様子。(ふむふむ)
今回の祝電トップは、小泉首相、二番手が安倍官房長官・・・。
凄い顔ぶれが続きますなあ・・・。
気にせず私はひたすら食事・・・。

主賓の挨拶で、あるお寺のご住職がなかなか良いお話をされてました。
睦まじさを保つには、上品過ぎるなと。
むしろ下品くらいでいいのかな、まあそこまでいかなくとも、
庶民感覚がとても大切で、決して背伸びはするなと言いたかったのでしょう。
そして、自分が正しくとも、常に謙虚に相手に接しなさい・・・と。
くーっ、弊社のスタッフに聞かせてやりたいよ100回位。

大体結婚式でスピーチする坊主は慶事の話が上手くて、そのくせ引導が下手。
過去の経験から導き出した、独断と偏見の法則です。
この方は冗談もお上手で、新郎が若い頃、自ら希望して神学校に通い、
神父を志した時期がある事をさりげなく紹介し、
そして最後のオチで、自分が神父にならずに新婦をもらったと・・・。
結構受けていましたが、途中でオチが私には見えていました。
(一歩違えばオヤジギャグだもんね)
でも、新郎新婦を思いやる慈愛に満ちた雰囲気はとても好感が持てました。

セレモニーも仰々しい余興を一切排除した、落ち着いた大人の式典という感じ。
もう私も年ですから、若者がバカ騒ぎするのはうるさく感じられます。
新郎新婦が各テーブルを二度ほど回って、コミュニケーションを取る。
こういうのでいいですね、結婚式も。
やはり最後は、心のこもったシンプルさ・・・これが一番。
司会者も無理に盛り上げたりせず、押さえ気味で丁度いい。

ハプニングが一つ。
ニコチンが切れたので、一服タイムとロビーで休憩していた時、
親戚の女の子(8歳位)が叔母さんに連れられてヨロヨロと出てきました。
顔は青ざめ、今にも吐きそうです。
でも大切な着物を汚すわけにもいかず、(晴れ舞台ですから)
首の周りは大き目のタオルでカバーされていました。
トイレに向かっているのは一目瞭然。
ふと、私と目が合いその瞬間・・・やってしまいました。
叔母さんは大慌て、スタッフも気づいてすぐに飛んできましたが、
叔母さんは自らの手を使ってタオルを押さえているので、
へたに動くことができずオロオロ・・・。

「誰か呼んできましょうか?」
「す、す、すいません、は、母親をお願いします」
「わかりました」
と、私が動き始める寸前、女の子が
「いや、パパを呼んで!」ときっぱり。

嬉しいですね、そうだよね、ママじゃ怒られるもんな。
こんな時は、パパに限るのだ。
会場に戻って事情を告げると、パパは飛び出しました。
ママはたいしたもんです、優雅に赤ワインを飲んでましたね。
その後、その女の子は着物を脱いで、普段着で参列してましたけど、
(きっと着慣れないので締め付けすぎていたのでしょう)
足元だけは「ぽっくり」だったのが笑えました。

デザートだけは、別室でのビュッフェスタイルだったのですが、
ここでも新郎新婦が率先して動き、賑やかな歓談のひと時をリードしてました。
大人のカップルという印象です。

新郎のご尊父様は、6年前に他界されています。
今年が七回忌で、もちろん私も法要に参加させていただきました。
その昔、よく我が家を訪ねてくださっては、岳父と飲んでいたのですが、
とても朗らかで驕らないタイプの方でした。
そんな事を思い出しつつ、花束贈呈の光景を眺めていました。



そして最後の挨拶の時間になったのですが、
新婦のお父様がマイクを持たれました。
やはり、新郎のお父様のことに触れ、配慮の行き届いた素晴らしいご挨拶。
この日を迎えるのに、何度も練習したであろうことが伺えます。
謙虚で、インテリジェンスに溢れ、そして娘の幸せを願う父親の姿。
もうここまでくると、他人事ではありません。
少しだけど父親としての気持ちが分かる部分もあって、目頭が熱くなりました。

こんなとこで泣いちゃ恥ずかしいと、視線をはずして隣のテーブルを見ると、
どうもさっきから動きが気になっていたのですが、
ある着飾ったお姉さんが、盛んにメロンをパクついています。
(おい、父親の挨拶だぜ、食うの止めろよ)
デリカシーに欠ける女性なのか、ビールまで手酌でグビグビ。
空気が読めないのでしょうか、厚顔無恥なのでしょうね。
上品に着飾っても、これではね。(ガッカリだよ)
アベックみたいなんですが、隣の男性は見てみぬふり。
久し振りに見たバカップル・・・懐かしいね、この言葉(死語だぜ)。

さて、ラストは新郎が皆様にご挨拶を・・・。
未だに大学で学ばれているだけのことはあって、
さすがに人前で話し慣れている感じです。
それでも今日のこの日を迎えるのに、相当のレッスンを積んだに違いない。
しかし挨拶は、技術ではないですね、思いですよ・・・思い。
これに尽きますよね、思いがあればちゃんと伝わります。
改めてその事を認識した次第です。
素晴らしいご挨拶でした。



来春4月に事業がスタートするばかりではなく、初夏にはお子様も誕生予定。
何? 順番なんかどうでもいいじゃない、そうかそうか・・・
それでこの年の瀬に慌てて結婚式か? (納得だね)
何事も包み隠さず、正直でよろしいがな。
どこかの芸能人なんて、計算合わないもんね。

御めでたい席に呼んでいただいて、少しばかり幸せを頂戴した気分。
お二人の幸せを祈りましょう。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2005年12月19日 18:02

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