それなのに…私のナレーション原稿にボールペンで穴を空けた人が居る。
司会台を離れての打合せ中だったが、視界にその光景が飛び込んで来た。
驚いた私は司会台に歩み寄り
「ちょっと何しているんですかぁ!」と激怒しそうになると、
その人はニヤニヤしながら、ボールペンを抜き取った。
あれ!?確か…
ボールペンが原稿を貫通していたはずなのに、穴はどこにも見当たらない。
「なぜ?」
その手品師は、音響の男の子。
悪びれる様子も無く、得意げにそのボールペンを手渡された。
種も仕掛けもなさそうだ。
怒りも忘れて、そこでボールペンをまじまじと眺めてしまった私も迂闊だった。
調子に乗ったマジックボーイは…
今度は不思議がっている私を横目に今度は、数枚のトランプを出し始めた。
(ギョッ!幾らなんでもそれは、まずいだろう)
「あぁ、だめよ。仕事中にこんなもの出したら」
と手のひらで隠してあげたつもりだったが…。
(どうも娘に近い年齢の子には、甘くてね)
しかし、既に担当者に見つかって相当怒られたようだ。
驚いたね。
いかにも大学生がアルバイトに来ましたという感じの音響さん。
この現場で手品とは…どういう神経の持ち主なのだろう。
若いとは言え葬儀の現場がどういうところかくらい、知っているだろうに。
あ~驚いたと同時に呆れてしまった。
「マジック披露は、合コンの時にしなさいね!!」
一言
「バカもん!」