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2006年07月26日

接遇研修会の動向・2006年 (加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

今年も早いもので7月半ば。
東京ではお盆が済み、夏、真っ盛りを迎えようとしている。

私は前社を含めて10年近く、
葬儀スタッフ向けに「接遇研修会」の講師をさせていただいている。
常々感じることではあるが、「人の教育」は難しい。
何年講師をやっていても、
受講生を育てながら「実は自分が育てていただいている」と思う瞬間がある。
そしてそう感じるのは、難題を抱えた研修会が多い。

「出来の悪い受講生」と出会う時、
「問題が山積みの葬儀社様」と出会う時、
私自身も「ああ、どうしよう…」と悩みながら途方に暮れる。
しかしだからこそ様々なアイデアが思い浮かぶ。
そしてどうやったら良くなるのか、
どうやったら出来るようになるのかを実践して行く。
紛れも無くその経験が私を接遇講師として育ててくれている。

接遇講師として研修会に呼んで戴くということには、必ず理由がある。
大体は、外部の講師を呼んで、
スタッフを厳しくチェックして欲しいという会社側の意図だ。
研修会というのは、講師であっても受講生への助言の仕方は難しいことが多い。
ましてや日頃一緒に仕事をしながら、内部的にスタッフ教育を行なうには限界がある。

研修というのは、良くも悪くも本当のことを伝えることが求められるから、
そこに日頃の人間関係や個人的な感情が入ると、絶対に上手く行かない。
それが「先生から、現実をはっきりと伝えてください」
「多少の厳しいことをきちんと言ってください」と頼まれる所以だ。
そしてどこの葬儀社も「接遇研修会を通して、会社を活性したい」という目的や
「このままでは、本当にマズイ…」という切羽詰った経営者側の思いを感じる。
そして「何のための研修会?」「誰のための研修会?」という目的に
双方がピントを合わせて実施することが、研修会を成功させる大事な要因でもある。

私は講師として接遇研修会で伺う時には、常にその葬儀社の繁栄を祈りながら臨む。
だから自然と言うことも厳しくなるのだろう。
経営者に成り代わり、スタッフ達を鼓舞していることも多い。
以下に、私が近年伺った接遇研修会の内容をまとめてみた。

①社会人としての基本講座(ビジネスマナーを含む、社会人の常識 他)
②葬儀スタッフの接遇基本(悲嘆心理、7つの動き、葬儀場面別接遇の基本 他)
③葬儀社独自の接遇プログラムトレーニング(ロールプレイング研修会)

①・・・
「社会人としての基本講座」は、社会人として知らなくてはいけない内容だ。
会社という組織で、社会人として大人として、
人と関わって行くためには知らなくてはならないマナーの全て。
主に新人向けの内容だとは思うが、
葬祭業界にはこのような研修を受けていないスタッフが多過ぎる。
だから、長い現場経験はあっても、
スタッフ同士やお客様など人との関わりに弱い人がいる。
それで一番迷惑をこうむるのがお客様だということにも気づかない。
これは葬儀の仕事をする以前の問題である。そんな中、今年はいくつかの葬儀社様が、
ベテランスタッフにもこの手の内容での研修会を希望している。

②・・・
「葬儀スタッフとしての接遇基本」は、葬儀という儀式を仕事とするスタッフ向けに、
専門的領域に入って行く。私たちの目的はひとつ。
「葬儀を通して出会うお客様を心から大切にする」ということ。
その為には、悲しみのお客様の気持ちを知ること、葬儀を仕事にしている自分を知ること、
儀式サポートの中での「見た目」の良さを身につけること、
葬儀の中での基本的な動きを知り、出来るようにすること・・・等がある。

③・・・
「葬儀社独自の接遇プログラムトレーニング」は、接遇基本からの応用で、
自社葬祭ホールでの接遇レベルを上げるための実践トレーニングだ。
お客様をお迎えする場面からお見送りの場面まで、
細かく接遇の設計図を引き、それが出来るようにすること。
これは常に変化するものである為に、継続的な接遇メンテナンスも必要だ。
どんな葬儀社でも、必ず一度は、葬儀接遇の全てを洗い出して、
そのレベルをチェックする必要がある。

大雑把に分けると、上記の内容になる。

そして常に①と②が合体したり、②と③が一緒になったり、
全体を広く浅く網羅したものだったり…と、研修会には決った物は一つも無い。
そこに、葬儀スタッフのチームワークや
グリーフカウンセリングなどの講義を適宜入れて行く。
受講生のレベルによっては研修会の予定と実際の内容が
多少なりとも変わる場合もある。
接遇の実際が出来るようにならなければ意味は無い。
又、新たな問題に出くわす場合もある。

そんな接遇研修会を通して、
会社内に風を吹かせることも私の役割だと思っている。
外部から入る私には、会社の雰囲気がよく見える。
もしその空気が黒くよどんでいたら、少しでも風を送る努力をする。
ただ、私だけがどれだけ真剣に向き合っても、
葬儀スタッフが変わらなければ、何も変わらない。
しかし少しでもスタッフ達に風が吹きはじめると、劇的に変化することがある。
そこまで行けばあとはスタッフ達の心の力で動かして行けると信じている。
講師が受講生に対して「こうしなさい」「こうなりなさい」という答えを与えるのは簡単だ。
でも実際には、受講生自身がどうなりたいのかに気付かないと、変化はして行けない。

私がよく、研修会テキストに載せるフレーズがあるので、ここに抜粋しよう。
・会社は、経営者の作品です
・スタッフは、会社の作品です
・葬儀は、担当者以下スタッフ全員の作品です
・自分の会社を どういう葬儀社にしたいですか?
・どういうスタッフになりたいですか?
・喪家には、どういうご葬儀を提供したいですか?
・悲しみのお客様には、どうなって欲しいですか?
・そのために、あなたは、何をしますか?
・そしてあなたは、どんな人になりたいですか?

悲しみのお客様は「待ったなし」で、私たちを求めている。
頼りになるのは、我々しかいない。
だからこそ、頼ってくださったそのお客様には、
心底、葬儀でご満足戴きたいと思うのが普通だ。
「多くのお金を払ったのに、満足出来なかった」という、
行き場の無い気持ちを葬儀のプロはお客様に与えてはいけない!

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年07月26日 00:00

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