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2006年07月16日

葬祭へぇ~ その3(工場長)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

葬祭D対策のテキストを編集し終わったが、
問題を見ていると「へぇ~」と思わせるものも多い。
素人の私ではあるが、過去に経験した葬儀において、
「なんでだろう?」と思っていたことも、
葬祭Dの問題として取り上げられていることもある。
(現場離れしていない問題は、良問!)

そんなわけで、葬祭Dにおいてちょっと気にかかった、
「葬祭へぇ~」をゆるい感じで紹介していきたい。
(葬祭D試験とは、全く切り離してエッセイを書いておりますので、
 その点、ご注意下さい。あくまで、工場長の「へぇ」です。)

今回は、その3。「喪服」に関すること。

2級の実技筆記に、
「知人が亡くなり線香をあげに行きたい。どんな服装が良いか?」
という問題があります。
あまりに常識的な質問に、
逆にどう回答すべきか困る方も多いのではないでしょうか。
「他人と合わせるのなら黒服だと思います。」としか、
私は頭に浮かんできません。
でも、それだけだと不完全なのでしょう…。

私の経験では、通夜、葬儀において、
参列者や遺族が着ている服装に関しては、
「黒服」以外はあまり見ていません。
黒い礼服が無いような若い子の場合は、
「制服」やそれに順ずる服装をしていることが多かったと思います。
今や、葬儀や通夜を「黒服(黒ネクタイ)」で行くのは当然という感覚があります。
(それ以外だと、逆に浮いてしまうでしょう。)

ただ、上記質問に対する回答を見てみると一行では終わっていません。
「近年、礼節マナーが説かれ、黒服が仏事の礼服として一般化しました。
 遺族・関係者のみならず、確かに弔問客も黒服を着用することが多くなっています。
 しかし、喪服は本来、喪に服している者が着用するのであって、
 喪の決定以前とも言える通夜においては、弔問客の場合は派手でなく
 キチンとした服装であれば問題はございません。
 また喪章は、意味合いとして喪服着用に準ずるものですから、必要ないと思います。」まさに、模範解答。

ここでは「喪の決定」が一つのキーワードとなっているでしょう。
喪の決定というのは、宗教的な死の決定と同じタイミングでしょうから、
葬儀告別式における「導師の引導」が、その境界線だったと思います。
(焼香のタイミングと同じ。)

通夜は、夜を通して死者を見るという儀式。
現代ほど医学が発達していなかった過去においては、
通夜が本当にその人が亡くなっているのかを確認するための日だと、
以前、社長から聞いた気もします。
だから、死者の顔に白布を被せるのだとか。
通夜で死者が息をすれば、直ぐに判るように。

通夜は、まだ宗教的には死の決定ではない。
また、医学が発達する以前は、生物的な死でも無い。
つまり、「喪の決定」以前なので、
(本来なら)喪服で行くのは、逆に失礼なのかもしれません。

ただ、現代の通夜は、葬儀の前日というだけで、
その様式だけが形骸化して残っている気もします。
解答の一部にある、
「喪の決定以前とも言える通夜においては、弔問客の場合は派手でなく
 キチンとした服装であれば問題はございません。」
というのは、まさに適切なアドバイスでしょう。
それでも、多くの弔問者が喪服を着てくるでしょうから、
喪服を勧めたほうが現場に則している気はします。

…服装をはじめとし、こうした様式の形骸化の連鎖が、
葬儀の本質を少しずつ狂わせているのかもしれません。
だからこそ、葬儀に携わる人は、
葬儀の本質的な部分を知っておく必要があるのでしょう。
(さすが、葬祭ディレクター。2級も素晴らしいですね。)

今回は、「喪の決定」という点が問われていた点に、
「へぇ~」でした。では、また。


<井手の割り込み>
ある地域では、人が亡くなると村をあげて大騒ぎをします。
女衆は夜中の12時までチンチロリン。
男衆は夜通しの宴会。
そして…
村で滅多にない、こんな楽しい夜でも起きてこないのだからと、
死が確定するのです。

ついでに、葬式は村の人総出で行いますが、
食事の火も死者が出た家の釜では炊きません。
忌がかかっている人は死者の家の火で、
そうじゃない人…主にお手伝い…は別火ですね。
これは<忌を避けたい>という意思の表れ。

村人が経済的相互扶助の精神で、
お米などの食物を「村香典」として持ち寄りますが、
実は自分たちの食事の賄いという見方も成り立ちますね。
念仏講や無常講の仲間が持ち寄るのも同じこと。

また連絡係は必ず複数で行動するとかの決め事がありますが、
これは<忌の分散>を狙ったものです。
同様のことが葬式習俗の様々なシーンで見かけられます。

本当は歴史的な喪服の変遷について書こうかと思ったのですが、
それはいづれまた。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年07月16日 00:02

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