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2006年08月08日

ホスピス「思い出の会」に参加しました(加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

私がボランティアをする地元の病院では年に数回、
病院からお見送りした方の身近な人々に集まっていただき、
「思い出の会」を開催している。
これは病院全体の催しなので、それぞれの病棟の医師、看護師なども参加する。

私がこの病院の緩和ケア病棟でピアノの演奏を始めて1年以上が過ぎた。
その間にお見送りした患者様は多い。
私がピアノの演奏に伺うのは週1回で、仕事の合間をぬっての活動だ。
その時の患者様やご家族の状態は様々なので、
その日によってラウンジでお会いできる方も、
直接お話が出来る方も、リクエストくださる方も様々だ。
しかしラウンジで弾くピアノの音は、
緩和ケア病棟の全域に聞こえているらしい。
実際にお会いできなくても、
私のピアノを楽しみにしてくださる方は多いと伺っている。

ここで出会った方々と、それが患者さまでもご家族でも、
リクエストを戴き演奏する活動はひとつひとつが私の中に鮮やかに残る。
演奏活動をはじめて最初にリクエストをくださったSさん。
お風呂へ行くベッドのままラウンジに寄ってくださり、
一緒に「もみじ」を歌った。
ヨンさまが好きで、戴いた「冬ソナ」のリクエストは、
メドレーにした楽譜が今も残っている。
この曲を弾くたびにSさんを思い出す。

スタンダードナンバーが好きだったKさん。
お髭が似合う紳士だった。
「想い出のサンフランシスコ」「男と女」
「シェルブールの雨傘」「ビートルズナンバー」・・・。
多くのリクエストを下さった一人だ。

私と同世代のAさん。
お子さんの年頃も似ていて話が合った。
フォークソングやJポップをリクエストくださった。
譜面を探しまわってやっと見つけたものもあった。
「木綿のハンカチーフ」「22才の別れ」「サボテンの花」
「学生街の喫茶店」「岬めぐり」・・・。
今も残る緑色のファイル全部が、このAさんからのリクエストで埋まった。

家族で毎日のようにお見舞いに来ていたTさんご一家。
お父様が、アンドレギャニオンが好きで、
「めぐりあい」のリクエストをくださった。
息子さんが譜面までご用意くださり、私は時間を作って練習した。
弾いて差し上げた時の息子さんの喜び方・・・。
お父様より喜んでいるのはご家族の方だった。

その他にも多くの患者様との出会いがあり、
音楽を通して共感した時間があり、その思い出が私の中に残る。

この方々は、ある日突然私の前からいなくなってしまう。
ピアノの演奏に伺った時にはじめてスタッフから、
「実は○○さんが・・・」という感じでお亡くなりになったことを聞く。
教えてもらえる時もあれば知らないままということもある。
音楽を通してそこまで心通わせた方が、
亡くなるということに耐えられなくなった時期もあった。
「私の中できちんとしたお別れが無いまま」というのが悲しすぎた。
何らかの言葉にして、お別れの事実を確認することがとても大切だと感じた。
「葬儀」とは、そもそもそういう儀式だということを改めて知った。
どこにも表現できない悲しみが私を襲った時に
「この悲しみを出さないと、もっと辛くなるかも知れない」
という気持ちになった。
そして今回の「想い出の会」に参加することにしたのだ。

ホスピスで出会ったご家族も多く集っていた。
私のピアノを聞きながら病室で共に語ったという話や、
音楽を聞いてから前向きになって行ったという話など、
私のつたないピアノ演奏が、
皆さんに様々なプラスの影響を与えていたということも知った。
この場所で私は多くの涙を流した。
多くの亡くした方と、初めてここで「お別れ」が出来たのだ。
涙を流すこと、声を出して泣くことがとても大事なことと実感した。

お集まりの方々も、多くの思い出を語りながら、
そして持参した写真をみつめながら涙していた。
時には嗚咽を漏らしながら、誰もが悲しみの思いを吐露した。
時には笑いも出たり、皆さんの中に残る故人を思いながら時間は過ぎて行った。
まだまだ立ち直れない所にいる方も多い。
でも、こういう場所があるから、そこで自分の思いを吐き出して、
1歩ずつ悲しみから立ち直って行けるのだと思った。

病院生活の中で、医師や看護師への感謝の言葉も多く話された。
身近な方を亡くして旅立った病院に、再び訪れることが出来るというのは、
やはりその日々が、スタッフ達によって暖かさや優しさに包まれていたからこそと思う。

ヨンさまのファンだったSさんのご主人様とも再会した。
私は思わず涙が流れた・・・お別れは悲しいけれど、
亡くした後にもこうして心の中に残るということは、すごいことだと思う。
人の死は、もう姿形はここには無いが、多くの人の心の中に生きて、
なお共に歩んでいることがよく分かった。

このような場所の提供は、病院ばかりではなく、葬儀社サイドでも可能であり、
もっともふさわしいのかも知れないと感じた。
しかしそれには、葬儀の段階からお客様を大切にし、
その心に残るような儀式を提供することが大切だと思う。
身近な方の「死」と向き合い、その悲しみを越して行くには、多くの時間がかかる。
そしてそれをサポートする場所が、今、求められていると感じた。

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投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年08月08日 00:06

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