納棺や湯灌にまつわる話はとても多く、その全部にきちんと理由付けするのは難しい。
しかし釈迦入滅の姿、頭北面西右脇臥に習って死者の頭の位置を北か西に向けるのは、
それほど昔からやっていたわけでもないだろうに世の中に浸透しているしね。
まあ分かる範囲でしか応えられませんが、
はじめに昔は座棺、今は寝棺、そして今は洋装、昔は和装をお忘れなく。
ついでに言うと、昔は土葬がかなり多かった。
死体は入棺前には洗うのが普通。
拭くだけの場合は、「拭き湯灌」と称し区別している所もあったようです。
湯灌の儀式は様々だが、一般に最も近い人達が、
縄帯・縄だすきで洗う風習が残っているようだ。
肌脱ぎになって洗う地域もあると聞く。
では何故こうした格好をするのか?
1.故意に普段と違った服装をする。
2.着衣の始末に都合が良く、死体に残っているかも知れぬ魂の移ることを惧れて。
以上の2点からだと思われる。
特に新潟県内では、死体の硬直前に膝や腕を曲げる事を「手直し」「床直し」と呼んだ。
また死体を動かす時は黙って動かしてはいけないようだ。
「おい」「さあ」とか「えなーぞ(担うぞ)」とか、何らかの声掛けをする。
例えば、死者を湯灌の盥(たらい)の中へ入れて、喪主が体を起こすときには、
「起こすばなー」と声を掛けたりする。
これは、「枕おこし」とか「仏おこし」と言うようだ。
湯灌に使う水の汲み方や、使った湯の捨て方にも色々と決まりがあるようだ。
例えば、湯灌に使う水は必ず山の水で、三人で汲みにいき、
ひしゃくを水の流れる方向に向けて汲み、庭で沸かし、
盥(たらい)に井戸の水を汲んでから、その後湯を注ぐ。
こういう汲み方や混ぜ方は、普段は決してしない。
また、湯灌の水を汲みに行った者を、必ず呼びに行く風習が残っていたり、
その場合、普段は井戸や川から水を汲んでくるのを、迎えてはいけないとされている。
今回の質問は湯灌の際、湯灌をする側が腰に縄を巻く風習だが、
死者の体を荒縄で縛ることがある。
座棺の場合だが、柩の中で骸(むくろ)が動かないようにと、
縄を首から膝へ掛けて固定している。
極楽縄と言うようだ。
また桟敷に胡坐をかかせて、死者の前には一度も立たずに縛る地域も在るらしい。
遺族が死者の正面に立ってはまずいらしいのだ。(忌がかぶるのだろう)
不浄縄と言い、この始末を介錯、よって介錯の縄とも言う。
他に、往生縄、浄土縄とも言ったようだ。
かつて死体は死者の抜け殻であったと考えられ、死者の本体は霊魂にあり、
それゆえ霊魂だけを祀れば事足りるということだろうか。
意外と死体を粗末に扱っている感じ。
いずれにしても湯灌は神聖な儀式で、
それだけに各地域でそれぞれにやり方が異なっている。
ただ、様々な所で「縄」は使われているね。
井手一男