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2007年10月02日

今、葬儀社の「意識改革」の時 (加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

昨年あたりから「葬儀スタッフの意識改革」…
これをテーマにした研修会のご依頼が来るようになりました。
私の場合はあくまでも「接遇研修会」の講師として、
お客様やスタッフ同士のコミュニケーションを切り口に、
「意識改革」の講義に入って行きます。

これからの時代を、お客様の側に立った葬儀のやり方をして行くために、
まずは「葬儀社スタッフの意識を変えることが求められている」ということなのです。
20年前、10年前、そして現在・・・世の中は確実に変わっています。
葬儀のやり方も、少しずつ変化していますし、お客様の考え方も大きく変わりました。
そしてこれから・・・まだまだ変わって行くでしょう。
変わっていないのは、誰でしょうか? 
全部とは言いませんが、それは葬儀社側です。
過去には通用したかも知れないことが、
今では通らないということにすら気付かなかったり、
その傍らで、お客様が離れて行っているという事実からも目を背けていたり・・・。
ここで言う「昔のやり方」とは、葬儀社優先のやりかたのことです。
「顧客満足」なんてことは、ハナから考えない、
「自分たちさえよければいい・・」というやり方のことです。

忘れもしない昨年、夫の友人の葬儀を施行した、地元S区内の葬儀社・・・。
「見積もりを出してください」という遺族の希望を無視して、
「うちはねえ、そんな細かいことはやらないんだよ・・・」と、
ため口で豪語した社長がいましたっけ・・・。

遺族は、「見積もりを出して欲しい」と、頼んでいるのです。
遺族側に立ったやり方をして欲しいと、懇願しているのです。
それを無視する態度・・・。
(その社長の人間性だとも言えますが・・・)

その瞬間、私はその社長の顔を見るのも嫌になりました。
「二度とこの葬儀屋に、葬儀を頼むことはしない!」と、心に誓いました。
そして、それ以来、「私の地元の何人に、この話をしたか・・・」
未だ私の腹の虫は納まらず、研修会のたびに悪い事例としてあげています。
そういう仕打ちをされたお客様は瞬時に、
「この葬儀屋は、ダメだ」と審判をくだしています。
気付いていないのは、葬儀社側だけなのです。
身内を亡くした悲しみ以上の悲しみを 葬儀社側が遺族に与えてはいけない!

葬儀社さんが、「意識改革」をしようと思った時、
すでに社内で、何らかの問題が起きていることが多いと思います。
「葬儀の施行件数が減って来た」
「このままでは大変なことになる・・・」と、焦っている時かも知れません。

人は、何かの問題を抱えて初めて「どうしよう・・・」と悩みます。
問題に気付かないでいれば、対策も考えずに、問題をそのままにしてしまうのです。
又、問題を真正面から見つめないで逃げていれば、いつまでも越しては行けないのです。
「ピンチはチャンス!」
「このピンチをどう切り抜けよう・・・」と、悩むことから、
次なるステップへのスタートが切られるのだと思います。

私は、経営コンサルタントではありませんので難しいことは分かりませんが、
経費の削減など、数字的なことから変革をすることも必要でしょう。
でも私は、最終的には「人」だと思っています。
その葬儀社にどんな人がいるか、どんな人がどんな言葉を使い、
お客様や周りの人をどういう風に、大切にしようとして思っているか・・・。
又は大切にしているか・・・。
そしてそれは、会社がどれほど従業員を大切にしようと思っているか・・・。
「顧客満足」以前に「従業員満足」だとも言われています。

先日、知り合いの葬儀スタッフが、
それまで仕事をしていた葬儀社をやめたという私宛へのメールが来ました。
一昨年、ある場所で知り合ったときに、彼女の口から、
仕事をしている葬儀社の信じられない事実が次から次へと出てきました。

私は他の場所でも、スタッフから悩みを打ち明けられるという経験があります。
人は、いつも我慢して耐えて来たことを吐き出したくなることがあります。
そういう時に私はとにかく「聴いてあげること」を優先させます。
打ち明けている本人も、私に何かの答えを求めているのではなく、
「ただ、聴いてもらいたいのだ」ということを感じるからです。
そういうときは多少、感情的にもなりますから、
そのスタッフからのお話だけでは、全体の判断は出来ませんが、
少なくても上司の怠慢、セクハラ・・・という話が出てきたように記憶しています。
時には、司会をしている女性の後ろを通りながら、
「男性スタッフが、お尻をさわる」という話も聞きます。
もう「お客様を満足させる為には・・・」なんていう研修会が、
どこかへぶっ飛んでしまうほど、次元の低すぎる話でおハナシにもなりません。
研修をする気も失せます。

葬儀社に限らず、能力のあるスタッフが、どんどん辞めて行く会社の話をよく聞きます。
スタッフ自身が、愛することの出来ない葬儀社が、
お客様から愛されることは難しいでしょう。
仕事とはある意味、忍耐です。
しかし、人としての尊厳が保たれない環境は異常なことです。
私が講師という立場でなかったら、
すぐに「そんな葬儀社、やめちゃえば!」と言えるのですが、
講師としては、まずは聞いてあげて、少し励まして、
もう一度やる気にさせることも言ってあげなければなりません・・・。
(最終的には、本人が決めることですが)
やめる決断をしたその彼女は、きっと他の場所で生き生きと仕事をして行くでしょう。
何年か修行したと思って、いい意味でその経験を生かすことです。
そして、嫌な過去は忘れるしかありません。
今となっては「あの環境の中で、よく頑張ったね!」と、
労ってあげたい気持ちでいっぱいです。

「人が人を大切にする」という基本的なこと、それが、私が持つ接遇理念です。
葬儀社のトップやリーダー達が「目の前にいる人(お客様、スタッフ達)を
どれだけ大切にしようと、どの位思っているか、思っていないか」が、
葬儀社の意識改革成功のターニングポイントだと思います。
そして、そのリーダー達をスタッフは、目の前で、よぉ~く観察しているのです。

今、政治も業界も、世の中の人々から、「変って行くこと」を真摯に求められています。
【生き残る者たちは、強い者ではなく、賢い者でもなく、変わって行ける者たちである】
という、生物学者・ダーウィンの言葉を思い出しました。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2007年10月02日 09:24

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