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2009年12月24日

海外視察研修⑤~SCI (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

前回紹介したようにSCIには様々なブランドがあるが、
その全ての鍵を握るブランド(Key Brand)として、Dignityが位置づけられる。
Dignityとは、威厳、尊厳、品位と訳されるが、イメージ的には故人の尊厳を守り、
徹底した顧客目線からデスケアを捉えようとしているのだろう。

そもそもデスケア業界は3つの分野に分けられる。
一つは葬儀施行、二つ目は遺体火葬、もしくは土葬する業者、
三つ目は墓石メーカー及び霊園業界である。
アメリカは今でも9割近くが個人経営のフューネラル・ホームで、
地域密着型の霊園とがっちり手を組んでいるし、その関係は親子代々受け継がれている。
この関係性を壊しての新規参入は難しいと言われていたのだ。
ところが腕っ節の強い大企業が、デスケアを総合的にサービスするようになり、
80年代後半~90年代にかけて積極的にM&A(合併と買収)が進んだ。
現在、アメリカにはSCIを最大手として総合デスケア企業が5社あり、
(SCI、スチュアート、ローウェン、ECI、カリッジ)
我々が訪ねたのはヒューストンのSCI本社であった。
ある調査によると、世界一大きな葬祭業者はSCIであり、
世界中に持っている葬儀会館の数は3,800で、
(日本中の全葬儀会館の約半数所有ということになる)
500の墓地霊園に火葬場の数は200と他を圧倒しているようだ。
実はSCIが経営するフューネラル・ホームの半数はアメリカ国外にある。
すでに国内から海外に目を向けている時代なのだ。

伺った話によると、州によっては独占禁止法に触れるケースがあり、
その場合は否応なく撤退し、自社を同業他社の葬儀社に売却しなければならないという。
その売却先だが「この会社には売りたくない」と思っても、忖度しないらしい。
それなのに何故M&Aを繰り返すのだろう。
拡大再生産という企業論理が働くのか。
だから市場としては、海外に向いているのだろうか。

ここで、アメリカと日本の葬儀の比較をしておこう。
一般にアメリカの葬儀価格の平均は約60万円と言われている。
おや、安いじゃないかと思われがちだが、アメリカの葬儀はホントに上限が無い。
更に言うと、下限もないのかもしれない。(貧富の差は日本より大きいと思う)
また火葬率は35%程度に上がってきており、葬儀のやり方も土葬との2種類。
(かつては土葬だったが、その理由はキリスト教の異端は火葬するという、悪魔裁判の
ような影響が強かった、が60年代以降、教会のOKも出て選択の自由が広がった)
平均すると亡くなってから3日~5日前後で埋葬する。
火葬した方が料金は安くなる傾向で、火葬率は今後も上昇するだろう。
国土が広く、地域格差による平均価格の差もあるし、都市部と地方部では方法論も違う。
墓地は不動産で、日本のように土地の使用権を取得するバージョンとはまるで違う。
日本とは随分環境が違うようだ。

総合デスケアの大企業SCIから学ぶことは多い。
彼らには、ファミリー・フューネラル・ケアというコンセプトがあって、
そこには涙も笑いもあり、思い出や人生を偲ぶ商品が多様にあり、
継続した人間関係の中で葬儀を捉えているから、火葬や土葬や柩や花や霊園など、
高価なものから安価なものまで、あらゆるオプションが用意されている。
勿論、伝統的な民間手法の取り入れや、多民族国家ゆえに、
それぞれ独特の葬法の取捨選択の自由もある。
アメリカは法律で、ジェネラル・プライス・リスト(価格表)は求められたら、
全て提出するように義務付けられているらしい。
だから、アイミツ(相見積もり)は当然で、時には10社程度になることもあるとか。

かつて、個人経営の葬儀社は、親しみやすく親切で低料金であった。
しかしそれでは、デスケアの一部の料金でしかなく、
葬儀の一連の完結のためにはもっとお金が掛る。
これからは、プロのスタッフが生花配送、遺体搬送、24H電話相談、生前契約、
霊園手配、墓石から納骨堂、グリーフサポート・・・etcの時代である。

生前予約、弁護士による遺言のサポート、様々な裁判に備える意味でDNAの管理、
埋葬遺体の親指(足)にGPSのICチップまで業務としているとは驚きだ。
(裁判と犯罪が多い国なんだな、と思うが)
その他サイバー空間上に、ある人を偲ぶ文章、音楽、写真などがアップ出来て、
そのサイトを、パスワードを使って閲覧したり自由に書き込んだり・・・。
遺族の心の助けとなる思い出話や、スタッフがお年寄りから電話で伺った話を
ネット上にアップしたりもする。
さらに細かい点を挙げれば、葬儀に参列する人の航空チケットの割引や、
会員の方の家族で21歳以下の人が亡くなった場合は、原則無料で葬儀を行ったり、
提供する商品が不満なら100%代金を返却すると明記していたり・・・。
また、日本のように火葬時間が決まっているわけではないので、
数日間ゆっくりとお別れが出来るし、その上で担当ディレクターに「明日火葬を」
あるいは「土葬をお願いします」・・・という選択肢もあるのだ。
火葬場も自社で持っているし、土葬する霊園さえ確保してあるのだから。
総合デスケア企業の強みだ。

なるほど大きな会社は、その大きさを前面に打ち出してやっているのだ。
しかし、2万人も従業員がいて、その社員教育は?
次回は、教育システムについての工夫を。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2009年12月24日 09:00

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