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2010年03月04日

記憶に新しい「おふくろさん騒動」について② (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

昨日の続き。

さて、その後の現実の進行(森さんはおふくろさんを封印しますが)とは別に、
作詞家が歌わせないと言ったら、歌手は歌えないのでしょうか。
結論から言えば、歌えます。
ただし、勝手にパースを付けたり、歌詞を変えたりはできません。
既存の歌詞や楽曲(メロディ)は著作物に当たります。
よって著作権者の許可が必要です。

ところが歌の世界はシステムが複雑で、一般に著作権は次々と譲渡され、
作詞家・作曲家から音楽出版社へ、そこから管理事業者へという風に、
プロの音楽は集中管理されているものです。
集中管理を行う団体を「著作権等管理事業者」と言います。
著作権を保有しているのは作詞家の川内康範氏ではなく、
著作権管理事業者ということになります。

つまり、管理事業者の許可さえあれば、川内氏が何を言おうと森さんは歌えるし、
もっと言えば森進一でなくても「おふくろさん」は歌えるのです。

ところがパースを追加したバージョンはどうか。
これは「編曲権」の問題です。
編曲権とは文字通り音楽のアレンジ権の事です。
この編曲権は、著作権等管理事業者にはありません。
一般には譲渡の対象ではありませんから、音楽出版社にありますが、
音楽出版社にも難しい部分があって、それは「著作者人格権」というものです。
著作者だけの人格的な権利で、誰にも譲渡はできません。
おまけに、著作者人格権の中には「同一性保持権」と呼ばれる権利があり、
簡単に説明すると「無断で、改変するな」と言える権利です。
結果として、パース付きの「おふくろさん」は誰も歌えません。

要するに、楽曲をアレンジするのは法律的に難しいのです。
音楽の三大要素は「メロディ」「リズム」「ハーモニー」と言われますが、
葬儀の式場で、勝手に改ざんしている曲を聞くたびにビクッとします。
何故なら、そのほとんどが(全てに近いけど)、
著作者本人の了解・許諾を得ていないのは分かり切っているからです。

世の中のカヴァー曲は問題ないのでしょうか。
だってカヴァー曲にアレンジはつき物ですから。
人気のある曲、スタンダードの曲は、多くのアーティストからも人気があります。
まずカヴァーされていると思って間違いありません。
「花―すべての人の心に花を」は156人、「涙そうそう」は101人、
私が学生の頃流行ったイルカの「なごり雪」は、
カヴァーしたアーティストの数だけで80人という人気ぶりです。

もし著作者から訴えられたら、全て法律的には通らないでしょう。
編曲権と同一性保持権の処理は無理です。
プロの世界では、仁義を切ったり、煩い人のケースは諦めたり、
基本的にはお断りを入れて出版社が処理をしているようです。
一応の配慮はあるのです。

もう一度言います。
勝手にアレンジするのはダメですよ。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2010年03月04日 08:00

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