親族優先提供の規定は、
海外に比べて圧倒的に少ない日本の臓器提供者を、
増やすきっかけにもなると期待されています。
一方で、ドナーの意思で臓器を優先提供できる国は日本だけです。
臓器移植の前提である【移植機会の公平性】を損なう恐れもあり、
今後、検証の余地もあるようです。
人の倫理を扱う課題は、時間を掛ける必要がありますね。
もう一つ、7月17日に改正臓器移植法が全面施行されます。
主な変更点は、15歳未満(生後12週以上)の臓器提供が可能になること。
そのガイドラインが、もうすぐ正式決定される見通しとなっています。
(参考:http://mainichi.jp/select/science/news/
20100519ddm013100162000c.html)
現在、臓器提供の意思表示が可能な年齢について法律には記述がありません。
指針としては、15歳未満の者からの脳死での臓器提供については、
臓器移植ができない状況にあります。
これは、法律には記述がないものの、
民法上の遺言可能年齢(15歳以上)を参考として、
15歳以上の者を意思表示が有効なものとして取り扱うこととしているためです。
遺言可能年齢は、葬祭ディレクターにも出ますね。
今回の改正法では、15歳未満(生後12週以上)の者が脳死した場合、
家族の意思があれば臓器移植できるようになります。
ただし、15歳未満であっても、
本人が臓器提供拒否の意思を示した場合は、臓器提供はできません。
また、被虐待児の場合は、臓器提供はできません。
親族優先提供の規定も、ありますからね…。
また、以前は脳死判定の除外対象が6歳未満でしたが、
今回、生後12週未満に引き下げられることになりました。
ただし、小児の脳は回復力が強いため、脳死判定は慎重に行うことになります。
一般の脳死判定では、脳波や自発呼吸の消失など、
5項目の判定を6時間以上の間隔を空けて2回行いますが、
6歳未満の場合、その感覚を24時間以上とする規定ができました。
纏めると、改正移植法のポイントは下記のようになると思います。
①親族に臓器を優先的に提供できる
(移植機会の公平性に課題あり)
②15歳未満でも、親の意思があれば臓器提供が可能になる
(ただし本人が生前に拒否の意思を示していれば不可。また、虐待児除く)
③脳死判定を行える年齢を、6歳以上から生後12週以上とする
(6歳未満は脳死判定慎重に)
ということで、臓器移植の件数が少ない日本の移植機会を増やすとともに、
今まで日本で臓器移植が出来なかった子供たちが、
臓器移植の機会に恵まれる可能性が出てきたということになります。