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2013年11月12日

「直葬」の見送り方(加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

母の友人(Y子さん86才)のご主人が、長年の闘病の末亡くなりました。
「もう、長くは無い・・・」と言われた時、Y子さんは「生前相談に付き合って欲しい」と、
私に連絡してきました。
お二人にはお子さんがいないので、ご主人のすべてをY子さん一人で世話して来ました。
早速私は、病院に入っている葬儀屋さんに連絡をして、打ち合わせに同行しました。
相談が始まるとすぐにY子さんは、「直葬でいいです。
病院からまっすぐ火葬場に運んで欲しい」と言いました。

隣にいた私は驚きました。
ご主人の兄弟はすでに他界していますが、Y子さんには3人の妹さんがいます。
都内の一等地にお墓もありますし、菩提寺とのお付き合いも長いはずです。
「ご住職に相談しなくて、大丈夫ですか?」と私が聞くと、もうすでに話はついているとのことでした。
妹さん達はそれぞれに家庭を持ち、それなりの暮らしをしていることは、
Y子さんから聞いていましたが、何年も疎遠だそうです。
何かの深い理由があるらしく「妹達は、絶対に呼びたくない・・・」と、意志は固かったです。
他人の私には、これ以上何も言えませんでした。
生前相談にお付き合いをした経緯で、私はとても心配でしたので
「万が一の時は、私にも連絡をくださいね」と伝えました。

数ケ月後に、ご主人は亡くなりました。
病院が近いこともあり、私はすぐに駆けつけました。
案の定、来ていた身内は、亡くなったご主人の70才を過ぎた甥子さん夫婦のみ。
その甥子さんは悪性の病気を患っていて「長時間は付き合えない」というので、
結局私が、葬儀の打ち合わせに付き添いました。
Y子さんは、ご主人を直葬で送るからと言って、お金が無いわけではありません。
だから棺はいい物を選び、別れ花もプランの2倍近くを別途注文しました。
翌日、いよいよ出棺の時が来ました。
Y子さんの身内は誰も来ませんでしたので、納棺に立ち会ったのは、
Y子さんとその友人の私の母と、私、そして夫の4人だけでした。
病院の安置室に葬儀屋さん2人が来て、黙って納棺が始まり、あっという間に終わりました。

「直葬」を選んだのは、喪主であるY子さんです。
葬儀屋さんは「直葬」という任務を遂行することが仕事です。
しかし、納棺前にせめて故人の名前くらい言ってもいいと思いました。
生まれた日、亡くなった日、没年齢。
簡単でいいですから、故人への弔意があるならば、何かの言葉にして伝えて欲しかったです。
その時に私はずっと「南無阿弥陀仏」をお唱えしていました。
Y子さんの家は、浄土真宗高田派です。直葬という形でも故人に宗旨があるならば、
参列者にも出来ることはあると感じました。

「直葬」だからと言って、ただ棺に入れて運び出せばいいというやり方に、
私は違和感を覚えました。これからの時代、亡き人を見送る形はどんどん変化していくでしょう。
それならばどんな形があるのか、遺族をサポートする側には何が出来るのか、
さらに考えて行かなくてはいけないと思っています。 

合掌

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2013年11月12日 08:30

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