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2014年10月27日

三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

「三千世界の烏を殺し、主と…(さんぜんせかいのからすをころし、ぬしと…)」は、
一説には、高杉晋作の辞世の句だと云われているが、
私がこの都都逸を知ったのは、中学3年の時だったと思う。
何だか妙に艶のある唄だと思った。
しかし「三千世界」とは、どういう意味だろうか。
何となく広い、全ての世界の事を言っているのでは、と思っていた。
※「都々逸(どどいつ)」は七・七・七・五の短詩型で、俳句や短歌の仲間だが、
庶民的で三味線と供に唄う江戸情緒豊かで粋な当時の流行歌。

当たっていた。
ずーっと後になって調べたら、「三千世界」とは、我々の住む世界を1個の世界とし、
それが1000個集まったものの3乗個らしい。(何じゃそりゃ)
すなわち十億個の世界が集まった空間のことである。
様々な辞書・辞典には、全宇宙とかこの世の全てとか書いているが、
仏教でいう世界観が現れた言葉なのだ。
(宇宙理論で云うヒモ理論みたいな話か)

 

仏教の感覚は日本人とは違って、まさしく大袈裟である。
仏教語に「刹那(せつな)」と云う言葉があるが、意味は一瞬のこと。
でもその一瞬とは?
具体的には、1回指を弾く間に65の刹那があると云われているから、
指を弾くのに1秒だとして、1刹那は65分の1秒らしい。

それとは逆に「億劫(おっくう)」という言葉がある。
年をとると誰でも億劫になる…なんて日常会話で使われるが、
これも刹那と同じく仏教語だ。
「億劫」は、元来、非常に長い時間を表す。
具体的にいうと、古代のインドで最長の時間の単位。
「一劫」の長さは、100年に一度、天女が高い岩山に舞い降りてきて、
その羽衣で頂上を撫で、その摩擦の連続で岩山が消滅するまでの…物凄い時間のこと。
その1億倍が、「億劫」なんだって。
(他の説もあり)
また、お経には「十万億仏国土」という云い方がよく出てくるし、
「恒河沙」と云えば「ガンジス川の砂の数ほど」という意味合いだ。

何だか、高杉晋作から仏教の世界観を学んだようだ。

<後日談>
それから暫くして、「三界万霊之塔」等と彫られて、
寺院の中に大きな石塔が刻まれているのをよく見かけるようになった。
これも同じようなもんだろうと高を括っていたが、舐めてはいけない。
「三界万霊」とは、衆生が生まれて死に輪廻する領域である
3つの世界にいる全ての精霊のことであった。
しかも「三界」とは、我々が生死流転する3つの迷いの世界のことだった。
その3つとは「欲界」「色界」「無色界」である。
色々と説明が難しいけど、なんだかんだ言っても3つの世界の一番下、
「欲界」の中の「天・人・餓鬼・畜生・修羅・地獄」を右往左往しているだけなのさ。
とても自分が小さく見えた。

※高杉晋作は、満27歳で没している。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2014年10月27日 08:30

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