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2005年09月21日

病院接遇の実践レポート その2(加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

病院ボランティアの2日目である。
病院に患者として入って行くのと、スタッフとして入って行くのとでは、
当たり前だが随分気持ちが違う。
スタッフの時はやはり腰が低い。
お会いした方どなたにもこちらから挨拶をし、にこやかに微笑んでいる私がいる。

さて、今回は、同じ2階にある血圧と体重の測定器の前で、
患者さんにご案内をするという仕事を仰せつかった。
血圧測定器は数台。
患者さんの座高によって選ぶのと、車椅子用のもの、
右手で測るもの、左手で測るものなどの種類に分かれる。
そして体重計が1台。
この体重計はちょっとおしゃれな形をしているのだが、
測り方がいまいち分かりにくい。
私も患者として測った時に、すごく戸惑ったことを覚えている。

この外来専用のクリニックが出来たのは今年の5月頃、
元々病院自体は昭和4年に出来た。
病院内のことでは私よりも詳しい患者さんが多い。
逆にこちらが教えていただくこともある。
しかしながら5月に新しい外来施設が出来たときには、大変だったらしい。
私は偶然にもその日に、区の健康診断に来ていた。
病院の幹部の方々まで受付に出てご案内をしている様子を見た。
しばらくの間はてんやわんやだったとスタッフの方から聞いた。
古くからの患者さんも
「なんで新しくなんかするの?」
「使いにくくなった」という意見が多く出たらしい。
特にお年寄りにとっては今まで慣れた病院の様々な使い方が変わってしまって、
使いづらくなったということだろう。
でも人間は結構すぐに順応する。
何回か通っている内に綺麗な病院の方が居心地良くなるはずだ。
絶対に!

ここにいる人は、病院スタッフと患者さんの2種類。
病院の朝は早い。
8時半からの診療だが7時頃から入口に並ぶこともあるらしい。
今は予約の方がほとんどだが、当日に飛び込みで来る方もいて、
早く受付をしたいという気持ちもよく分かる。
患者さん以上にスタッフの朝はあわただしい。
いや、朝ではなくてもあわただしい。
とにかく病院のスタッフは忙しい。
次から次へと患者さんが見えて、それも様々な症状を訴える。
多くの診療科がありその症状を聞き出してそれぞれに振り分ける。
総合受付専門でご案内するナースの方は、
それは広い知識と経験の中で、上手に振り分けて行く。
それは見事だ。
具合の悪い患者さんの状態や気持ちは、1分1秒も待った無し。
その気持ちに添おうと、こちら側スタッフも一生懸命になる。
素早くご案内しようと頑張る。
診察室内(バックヤード)の様子は戦争のようだと聞いた。
外来の待合室ではその気配すら感じない。
そしてどうしてもスタッフ側と患者さんの間で隔たりを作るのは、
それぞれの気持ちだ。
具合の悪い患者さんの動作やリズムはゆったりと遅い。
こちらの言葉を理解する速度も遅い場合が多い。
辛い、痛い、重い、沈んでいる気持ちなどマイナス的な気持ちでいっぱいである。
スタッフは素早く忙しくご案内しても、
患者さんはその速いリズムに着いて行けないこともある。

これは葬祭ホールでのお客様とのやり取りでも同じだ。
開式ぎりぎりまでスタッフが忙しく動き回り段取りを組んでいることがある。
それを見つめる遺族は、そのバタバタをどのように思うだろう。
式の次第説明の言葉も速く、お客様が充分理解しているのかすら把握せずに、
先へ先へと急いでいることはないだろうか・・・。
せめて開式30分前には、式場でのバタバタとした忙しさは終えて、
開式までの静かな時間を遺族や会葬者に演出してあげたいと願う。

病院でのご案内で、この日私が心がけたのは、
スピーディな対応の中にも、ゆっくりとした言葉での説明と丁寧な応対だった。
それには自分の気持ちをゆったりと持つこと。
私自身が焦っていると言葉も動作もすべてが速くなってしまう。
私自身がゆったりと構えるために、体重計の前で何度も深呼吸を繰り返した。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2005年09月21日 22:51

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