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2005年12月10日

メモリアルレポート「こだわり・・・」 (橘 貴美子)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

「拘り」という言葉を辞書で引いてみると、
「ちょっとしたことにとらわれる。」と出ています。
こだわりのフォルムとか、こだわりの味などと
多くの人がプラスの意味にとらえているようですが、
こだわるというのは、拘束される、とらわれるのであって、
自由ではなく柔軟性のなさを表すこともあるのです。

先日行われたご葬儀で、こだわりの・・・と言いたいところですが、
なんとも柔軟性にかけるご住職と一緒になり、
思わず「クソ・・・」と心の中で叫んでしまいました。
始まる前の打ち合わせで、お経は45分、焼香のタイミングは引導の後、
焼香まで20分という配分で進行が決まり、失礼しようとした瞬間ご住職が、
「今日のお弁当はどこの業者?」と聞かれたので、
「さあそこまでは存じ上げておりません。」と申したところ、
「この間のお弁当に入っていた醤油がまずかったので、
そこの業者は使わない方がいいですな。」と言うのです。
醤油がドロドロしていたそうで、たまたま古いのが当たってしまったのか
分かりませんが、ひとしきり醤油の悪口を言って、
担当に伝えておくよう念を押されました。
味にこだわりをもっている人なのかしら?
それとも・・・いやな予感。

一事が万事といいますけれど、
このご住職、何かにつけいちゃもんをつける人だったのです。
ご葬儀が始まり、引導が終わるまで20分ではいかず
30分かかってしまいました。(まあそれはそれでいいのですが)
残り15分で約100名のご焼香、香炉は3台なんとかいけるかな・・・
と思っていたところ、40分でお経が全て終わってしまったのです。
そこでお焼香を一旦止めて退場してもらっても良かったものを、
住職はまだ終わっていないと言い、
さりとてお念仏を唱えるでもなく・・・ただ座っていたのです。   
私たちは、最後まで焼香をすますよう淡々と進めていったのですが、
ただ座っているなら念仏でも繰り返し唱えていてくれても
良いのではないかと思ったりもして・・・。

ご住職退席後、司会者を呼べと息巻いていたそうですが、
私は弔電を読まなくてはならなかったので、それどころではありませんでした。
お別れの時間になって住職が私のところへやってきて、
「進行の時間を守れ」というのですが、守らなかったのは住職のほうで、
何しろ私の方はストッポチではかっていたのですから。(ちとオーバー)
まあ、早くお経が終わることはままあることですが、
途中でいくらでも退席できたのですし融通利かせて欲しいものです。

住職というのはいい葬儀をしたいのか、自分の我を通したいのか
本当に分からなくなるときが多々あります。
これで聖職につく身なのか?と疑いたくなる人も多くいます。
あとで他のスタッフにもいろいろ無理難題を言っていたということが分かり、
弁当にはドロドロの醤油に加え、
固まったソースもつけたほうがいいと思いました。

この葬儀で、ひとつ感動したことがありました。
故人は78歳で、家族や知人に分けてあげようと
柚子を拾いに行って転落し、脳挫傷で亡くなられました。
本当に痛ましい残念な事故です。
そして通夜の清めの席で、ご主人が親族や弔問客に挨拶されたのですが、
「妻はこうした事故で亡くなりましたが、私たちは56年間
夫婦円満で何も悔いの残ることはありません。」とおっしゃったのです。
それはとても見事でした。
喪主様は、一見素朴な農家のお爺さんという感じで、
どう見ても、人前での挨拶は苦手そうに見えるのです
けれど、ご主人の心の清らかさを見、妻への想いを感じ、
日一日を大切に生きることの尊さを教えられました。
誰でもそうですが、明日命のある保障などないのですから・・・。
また、どういったことで亡くなろうとも、
日々しっかり人間らしく生きていれば悔いは残らない
ということも痛感させられました。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2005年12月10日 18:18

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