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2006年05月02日

節回し (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

スピーチがとても魅力的な政治家がいた。
彼の話し振りは多くの聴衆を魅了した。
しかし幼い頃は吃音で悩んだという。
悩んだ末にその少年は、寝言と歌の場合だけは、
不思議と「どもらない」ということを発見する。
寝言の練習は出来ないから、歌の場合がヒントになった。
話す時に歌うようにすれば、どもらないのではないか・・・と。
以来、リズムを刻みながら話すように心掛けて、やがて吃音を克服したという。
この独特の節回しをする政治家の話し方は「講談調」である。
彼の名は、田中角栄。

葬儀の司会でも<節回し>に良し悪しが有り、
これを理論付けて、体系的に教えるのに苦労した。
<癖>と<節回し>は表裏一体だが、
厳密には違うことを理解してもらうのが難しい。
<個性を活かした節回し>と、<脈絡のないただの癖>は似て非なるモノ。
節があれば聞きやすいが、癖があれば聞き辛い。
この個性を活かした節回しと、聞き辛い癖のある口調との違いが分かれば
葬儀司会のテクニックは容易くマスターできる。
自分の声を、自分の耳で聴き分けることが出来るから、
自分の司会にテクニックを反映することが容易になる。
自らの司会を、正しく客観的に判断出来る能力を培うことが講習のポイントだ。

件の政治かではないが、大きな欠点を持つ人は、
それを乗り越えたときに大輪の花が咲くこともある。
障害を越える体験が何よりの肥やしになるのだろう。
そして短所が長所への近道になることもあるのが葬儀の司会。
ただし、活かせる短所と活かせない短所がある。
その見極めも講師の仕事だと心得ている。

キーが高くて悩む女性が多いけど、これは活かせる短所。
音の流れ次第で何とでもなる。
ガラガラ声や擦れ声で悩む人もいるけれど、これも活かせる短所。
個性的な、それでいて口調に癖がなくなれば、
立派な節回しが出来上がるだろう。

一般に葬儀司会に不向きと思われている短所は、実は短所でないことが多い。
そして平素から悩んでいる人ほど、音に敏感で、感性が磨かれていることも。

それに引き替え、堂々とした低音の持ち主は、
自慢の声に頼りすぎて表現の幅をつけることが苦手だ。
最終的には、ガラガラ声や擦れ声や高い声の人に負けることになる。
一本調子で、工夫の跡がなく、いくら注意しても聴く耳をもたず、
一人で自分の声に酔いしれて、自分の世界で自己完結してしまう。
良い声を持ったということが、かえって災いになることもある。
感性を鈍感にしてしまったその声が、短所なのかもしれない。

自分に欠点があると自覚している人は、恵まれているのだ。
どうやったら上手に聞こえるのだろうと、<節回し>に努力するからね。
その気持ちがあれば、葬儀司会セミナーが有意義なものになる。
次回は、5月26日(金曜日)。
手薬煉(てぐすね)引いて待っています。
(ウォーリャー)
というわけで、5月の試聴を用意しました。
橘の節回しを聴いていただきましよう。

FUNETの音声ライブラリ、
5月のプロローグナレーションから、
1つをサンプル試聴できます。

下のボタンをクリックしてください。

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投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年05月02日 00:00

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