宿泊地は、その主要都市からは一つ手前の駅になったと決まった段階で、
インターネットで「鎌先温泉」という、ひなびた山あいの、
いい感じの温泉をチェックしていました。
研修会前日というのは、夜、指定のホテルに入るだけというパターンです。
夕方頃に着いて会場で打ち合わせという場合もありますが、
もう何度も伺っている葬儀社様は、私一人で現地に入ることが多いのです。
しかし前日に他の研修会があれば、最終電車すれすれで、
疲れ果ててホテル入りということもあります。
しかしながら今回は、色々なことが私に味方してくれて、
研修会前日の最高にリラックスした1日になりました。
東京を前日の朝9時頃に出た私は、一応会社に、
前日行動を報告しなければいけない身なので、
少し早いけれど今から東京を発つことと
「今日は、OFFです。私を探さないでください!」
というメールを社長宛てに送って、のんびりと新幹線の景色を楽しみました。
今日は携帯もメールも時計もはずして、リラックスというのがテーマです。
(と、思っていたら本当に携帯がつながらない地域でしたけれど・・・)
駅を降りて、ネットで探していた通り、
白石市民バスというのに乗り換えて、いよいよ出発です。
どこまで行っても料金が100円というのが、まあ、すごいですね。
マイクロバスのような小さなバスに、おじいちゃん、おばあちゃん、
高校生達と一緒に乗り、一瞬にしてこの町の人みたいに私は溶け込んで行きます。
あれよあれよという間に、さっきいた駅も街も眼下に広がって行きました。
きれいに舗装された山道を小さなバスはどんどん登ります。
田んぼの中の道や農道を走って行くのには、感激しました。
黄金色に染まった稲穂、道端のコスモス、青い空、白い雲・・・。
私の心のネジがどんどん緩むのを感じました。
そしてこのバスは、どこにでも停まります。
その橋のたもとで・・・とか、そこの畑の前で・・・などと。
なんだか私の顔もほころんで、隣のおじいさんと話はじめていました。
ちょうどそのおじいさんも同じ場所で降りました。
「日帰り温泉は、どこがいいですか?」と聞いてみましたが
「どこでも同じだべ」みたいな返事だったので、
私は心に決めていた【時音の宿】「湯主一條」を目指して歩き始めました。
本当にそこだけが温泉地で、4件ほどの老舗の旅館やホテルしかありません。
他には、お土産屋さんと郵便局位。
急な坂道を上がって行くと、その風情あるお宿の全貌が見えてきました。
平日のお昼頃に歩いている人など、私しかいません。
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「ごめんください」と、入って行くと、
中から接客中だった男の人が急いで出てきてくれて、
他の従業員を呼んでくれて、湯処まで案内してくれました。
迷路のような館内です。
「とにかくお風呂!」と思っていたので、
お昼ご飯も食べずに「ざぶ~ん」と、ひと風呂浴びました。
そこは「薬湯」といって、鎌先温泉でも売りのひとつだそうです。
この旅館は、建物もお風呂も何もかもが古いのですが、
とても清潔なのと、その歴史を感じさせる重みがあって、
新しいものばかりが、人間の満足では無いということを感じました。
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その次には、いよいよ露天風呂へと移動です。
荷物はロッカーに入れたので、手ぬぐい一つ持って、
建物の中を上がったり降りたり・・・ようやく辿り着きました。
平日の昼下がりに温泉なんて、誰も来ないということもよく分かりました。
どこへ行っても、貸切状態でしたから・・・。
露天風呂では、出たり入ったり40分位、本当にノンビリと、
ゆっくりと、頭をからっぽにしてリラックスしました。
聞こえるのは、沢の水音と鳥の鳴き声、風の音、それだけ。
見えるものは、緑の木々だけ。
私も自然の一部のように、まったりしました。
頭をカラにして何も考えないということはなかなか難しいことですが、
目をつむっている内に現実と夢の世界を行ったり来たりという感覚になりました。
「これこそが、究極のリラクゼーション」なんて、ぶつぶつつぶやきながら、
誰にも気をつかうことなく過ぎて行く2時間あまりが、何とも心地良かったです。
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お風呂を上がってから、静かにBGMが流れる素敵な喫茶室があったので、
美味しいコーヒーを飲みました。
めずらしくビールでは無いところが、不思議でした・・・優雅な気分だったのでしょう。
しかしお腹が空いてきて何か食べたいと思い、若い仲居さんに聞いてみました。
手打ち蕎麦「むらかみ」というお薦めのお蕎麦屋さんがあることを教えてくれました。
街中まで戻るのですが、「とにかくそこは美味しい!」と本気で言うものだから、
タクシーを呼んでもらい「釜先温泉」を後にしました。
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「湯主一條」は、BGMの使い方がとても上手で、
お風呂の脱衣所でも喫茶室でも、心地よく聞くことが出来ました。
予約すると、レトロなお部屋でジャズを聴きながら食事をいただけるということです。
是非、もう一度来てみたい場所のひとつになりました。
その後に行ったお蕎麦屋さん「むらかみ」も、
とても美味しくて「大満足の休日」となりました。
その後チェックインしたホテルの部屋からは、蔵王連峰が眺められて、
夕方遅くまで、夕焼けに染まるその景色をずっとながめていました。
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こういう仕事をしていると、
どうしてもホテルやレストランなどの接客にストレスを感じることが多いのです。
カラダに悪いので、嫌なことは感じないように、
見ない、聞こえない振りをすることも多くあります。
しかし、この【時音の宿】「湯主一條」は、
ホスピタリティにあふれた最高の場所でした。
出会ったスタッフは3人だけなのに、
寂しさや物足りなさを感じないのはどうしてだろう・・・。
それは、お宿全体に暖かさを感じるからだと思いました。
そこにいる人が醸し出す雰囲気や、言葉、眼差しのすべてが、
その場所の空気を作るのだと感じました。
本当に、「行って良かった~」と思える、大成功の休日でした!