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2008年10月23日

父の「ラスト・ドライブ」(加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

この春に話が持ち上がって「ああだこうだ」と親戚中を巻き込んで進んだ、
私の両親の東京への引越話は、10月に入ってから一気に進みました。
ある業者への売買が決まり、安堵した直後、
近隣の方から「息子夫婦に買いたい」というお話をいただき、
バタバタと話が決まったのです。

私は10月に入ってから、毎週のように実家のある水戸に行っては、
中心になって準備を進めています。
不動産に関して、家のいらないものの整理、
捨てるもの、捨てないもの、私達の幼い頃のもの、
いらないけれど、捨てられないもの、
親戚とのこと、両親のお付き合い関係、東京の家探し…。
私がこの年になって、
両親の引越しの算段をするなんて思ってもみませんでした。
本音を言えば、大変な仕事で参っています。

グリーフ(Grief)を広い意味で語ると「喪失」です。
身近な人の死はもちろんのこと、
失恋、離婚、失業、リストラ、故郷を失うことも、「喪失」のひとつです。
今まで当たり前のように存在した実家が無くなるということに、
私の心がついて行きません。
かと言って、やらなければならないことは、次から次へと目の前に現れて、
必死にこなしているという感じです…。
研修会の様々な仕事と同時に行っていますので、
「エッセイを書く時間も、そんな心の余裕もありません…」というのが本音です。
「社長…ゴメンネ…」

その中でも、救われることもあります。
そのひとつが、父の「運転免許証の返納」です。
御年82歳。運転歴40年以上。
私が子供の頃から学生になっても、
何処行くにも父は車で送り迎えをしてくれました。
大学進学で東京に来たときには、まだ常磐自動車道が出来ていなくて、
国道6号線をひたすら走り、青戸の交差点から環状7号線に入り、
練馬区桜台まで布団と家財道具を運んでくれました。ありがたかったです。

その父も、すでに運転は…、当然、若い頃のようには行きません。
「周りの車が避けてくれるので、大丈夫だ」と言います。
「免許は絶対に、返納はしない!」と、言い張って来ました。
母も兄も、もちろん私も、父の兄弟姉妹、みんなが心配しています。
もちろん遠出はしませんが、かかりつけの歯医者や詩吟の教室、
ちょっとした買い物などの町内を運転してしまいます。
母が、目を離した隙に、乗って行ってしまうのです。
父も、年老いた自分との折り合いを付けられずにいる様子です。
気持ちは分かりますが、
何かがあってからでは大変なことになります。

その父が、やっと免許返納の気持ちになってくれました。
どうせ、東京に来れば、車なんていらないし、
第一怖くて乗れるはずもありません。
そんな父の、多分、ラストドライブです。
母は、仕方なく隣に乗って行きました。
どんな会話をしているのか…。

母は、多分父に対して、うるさいことを言っているのだと思います。
「止まって!」「はい!オーライ!」「ストップ!」ラストドライブだなんて、
感慨に浸る暇は無いと思います。
子供の私としては、切なくもあります。
「お父さん、長い間、家族やみんなのために、ありがとう。お疲れ様でした」
世の中や人様のために、これがきっと?最後の運転です。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2008年10月23日 09:00

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