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2010年03月31日

お葬式で読まれる<お経>の言葉 (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

私は全て(一切経)のお経について意味が分かるわけではない。
それどころか、読めないお経本がたくさんある。
築地本願寺に通った僧侶コースの3年間で浄土真宗本願寺派については、
ある程度学んだから多少は理解できる。
だが、葬儀社は一般にお経の意味を知ろうともしないだろう。
また<偽経>の話には関心もなさそうだが、仏教という故人の受ける権利に関して、
仏教ではない思想を持ちこんで本当に大丈夫と思っているのか。
(何も考えていない人が多いだろうが・・・)
お経とは、大体「私はこのように聞いております」から始まる、
生前のお釈迦様の言行録に近いものです。
僧侶が大切なお話(お経)をしている最中に「焼香案内」とか煩いぞ、静かにしろっ!
てなもんで、色々と言いたい事はあるのだが、今日は話の矛先を僧侶側に向けよう。
それも他宗派を攻撃するようなことになってはいけないので、
我が真宗についての考察だと思ってもらいたい。

奈良時代、国家鎮護を主目的として仏教が広まる。
そして平安の初期、その仏教を最澄や空海が市井の人々にまで広めようと奮闘する。
やがてその道は、天台宗や真言宗に留まらず、日蓮宗、浄土宗、浄土真宗、曹洞宗、
臨済宗等へと枝分かれし発展していった。
例えば奈良仏教では「三劫成仏説(さんごうじょうぶつせつ)」といって、
無限に長い時間をかけた修行の果てに、はじめて成仏できると信じられていたが、
空海は真言密教という思想によって、現世の修行だけで成仏できると主張する
「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」を唱えた。
これらは庶民に分かりやすく支持されやすかったのである。
(注)「即身成仏」とは、一般的に数十年かけて修行を続け、悟りを開けば・・・
という年数の事を持ってして「即身・・・」と三劫に対して言っているのである。
・・・というような仏教の発展の歴史があるのだが、ここからが本題。
奈良時代末期、桓武天皇が「漢音を習熟せよ」という詔勅を出す。
それまでのお経の読み方は呉音だったのだ。
えっ、お寺の鐘が「ゴオォーン」。

後漢の滅亡後、300年分裂の時代が続いた中国を統一したのが隋。
しかしその隋も僅か37年で唐に滅ぼされる。
その唐は、その後300年に亘って中国を治めるのだが、
唐の都長安は、当時世界最大の国際都市であった。
奈良・平安時代に16回程度の遣唐使が送られている。
遣唐使らが習得した漢字の発音は「漢音」であった。
ところが日本では、それまで上海付近で使われていた「呉音」の影響を強く受けていた。
もうひとつおまけに「ゴオォーン!」

正しい音を習わないため発音や読誦にすでに間違いがあるから、これを正すようにと。
そして「漢音を学んだものでなければ得度させない」という詔勅までだした。
(注)この<得度>は現在とは少し違うが、仏道に入る人は税金を納めず国家公務員
として給料をもらうことができた。
つまり僧侶は、間違っても呉音でお経を読んではならないという命令なのである。
ところが、何処をどう間違ったか知らないが、
我が浄土真宗本願寺派では、立派に呉音で読んでいます。
「仏説阿弥陀経」を「ぶっせつあみだきょう」と読んだら呉音読みだ。
「仏説阿弥陀経」を「ふっせつあびたけい」と漢音で読まなくてはならない。
だから天台宗では、「ふっせつあびたけい」と漢音で読んでいるのだ。
しかるに我が真宗は「ぶっせつあみだきょう」と呉音読み。
「経」を「けい」と読んだら漢音、「きょう」と読んだら呉音である。

ところが最近、言語学の書物を読んでいて面白い記事に出会った。
唐代の漢音では、
「経」をと発音されていたらしい。
カタカナで書けば「ケン(グ)」となるのだ。
ならば漢音で「経」を「けい」と読み下しているのも誤りとなるのだ。
お経の漢音読み下しも、呉音読み下しも、考えてみれば大差がない。
どっちみち誰も話の中身を聞いていないしね。
「ガッチョーーーン!・・・ハリホレハレホリ・・・」

それよりも、漢字という素晴らしい表記文字のお陰で、
論理的な「カタカナ」や情緒的な「ひらがな」という文字が出来たことが喜ばしい。
次回は、その辺りのことを書くつもりです。

<追記>
実は桓武天皇の詔勅が出された頃(792年)は、真宗の欠片もまだない頃だけど・・・。
真宗がこの世に登場するまでに、まだ数百年掛ります。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2010年03月31日 09:00

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