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2010年06月18日

葬祭のサービスについて2 (井手一男)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

一概にサービスと呼んでいるけど、その中味はかなり違う。
良いサービスとは何だろう。
人はどういう時に良いサービスだったと感じるのか。
サービスの質は、時代との関係性が必ずあるものだ。

かつて・・・
大阪万博でケンタッキーが日本に上陸した1970年、
銀座三越の1Fにマクドナルドが第一号店を出店した1970年、
そして、ファミリーレストランが登場した黎明期(1970~1980年)、
人々が求めるサービスの質やレベルは現在と比較にならないほど低い。

今、ファミリーレストランへ行けば、昼時は主婦連中が喋っている。
まあ、なんと賑やかなことだろう。
テーブルの上には、全員分のフォークとナイフが纏めて揃えてある。
これもマニュアルなのだ。
ところが、たまたまその中の一本、フォークの汚れが薄く残っていた。
間髪を入れずにピンポン・・・と呼び出し、クレームを言う。
日常茶飯事だし、クレームを言われる側もマニュアルで対応している。
一食800円とかの食事にしてもこの有様だから、
安くなったとはいえ葬儀の料金だったら猛烈なクレームだろう。
(金額だけでのサービス比較は正しくありませんが)

あの頃だったら、フォークとナイフが出てきただけで満足だったのに・・・。
当時と今では、国民の生活水準が違う。
サービスの受けて側の意識が、まるで変わってしまった。
受けて側は、時代と共に成長するものなのだ。
それは、企業の成長と共にあり、国によってもサービスのバラツキはある。

それでは現代の葬祭サービスに、国民側が望むサービスレベルを考えてみよう。
良いサービスと不満を感じるサービスの違い。
これは、そもそも求める側のサービスレベルがあって、
提供する側が、それ以上のサービスか、それ以下のサービスかに尽きる。
つまり提供する葬儀社サイドと、受けて側(主に遺族)の両面から見なければならない。
そこでサービスのレベルを簡単な数値化で表す。
提供する葬儀社サイドも、受けて側(主に遺族)も、
1(低レベル)~3(標準レベル)~5(高レベル)で示す。

余談だか、この数値化して教えるというのは、私の司会講座の特徴である。
私は<表現力>を各項目に分類し、数値化しております。

現在では滅多に無いことだが、受けて側のサービス期待値が1だったとしよう。
葬儀社に何も期待していないわけだから、提供サービスレベルが1でも普通。
もし2や3なら大満足、ましてや4や5なら、それこそ感動してくれるだろう。
思えば、私が葬祭業界に飛び込んだ25年前は、このケースがあった。

普通に考えて、受けて側のサービス期待値が3だったとしよう。
その場合は、提供サービスレベルが1や2なら不満足。
3で普通、4~5を提供できて満足してもらえるが、感動までは難しいかもしれない。
現在はこのレベルを基準にして考え、もっと上を目指しているのが普通ではないか。

ところが、受けて側のサービス期待値5、
あるいは過大に期待していて現実には存在しない6以上だったとしよう。
これはもう担当者がかわいそうである。
提供出来得る最高値を叩き出しても評価は普通、乃至はやや不満となるわけだ。
(葬儀司会にも同様のことが言えます)
最近は、このケースも見受けられる。
が、そもそも葬儀社サイドが【感動する葬儀の提供】を謳っているのだとしたら、
顧客の期待値は高まるを得ない。

単純に、感動する葬儀というのは、提供する側と受けて側との「差」だと思う。
だからそこを目指すと、限界があるのだ。
つい10年前・5年前までは、喜んでいただけたサービスも、やがて普通に変わる。
かつて存在した感動も、すぐに飽きられる運命なのだ。
これがサービスの本質だろう。

私は【感動する葬儀の提供】を謳っている葬儀社が嫌いなわけではない。
志す者の気持ちは痛いほど分かるが、そこで働く人々にとって、
【感動する葬儀の提供】を謳った以上、やがてはギミックやパフォーマンスに
走るスタッフの負担の事が気に掛かるし、受けて側のハードルを上げる必要があるのか。
むしろ、広告としてマイナスの要素をどうみているのか、ということだ。

今後、葬祭のサービスがどこへ向かうか不明だが(私は専門家でもない)、
現在進行形で進化し続けていると思いたい。
接客の講師が担当するサービス提供ではなく、もっと異質の何かが欲しい。
そういうジレンマを感じているのだ。

今回【感動する葬儀の提供】と<マニュアル>との言葉をキーワードに、
葬祭のサービスについて書きましたが、
もっと別の側面から光を当てることも出来るでしょう。
機会があれば、いずれまた。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2010年06月18日 09:00

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