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2006年03月27日

葬儀司会(無宗教)を終えて (石川 元)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

宇宙船艦ヤマトの映画を観に行ったのは、確か中2の頃だったと思います。
エンディングでは、感動してボロボロ泣いた記憶があります。
私の青春時代のひとコマを思い出させてくれる懐かしい曲。

 

「宇宙船艦ヤマト」「真っ赤なスカーフ」…あれから30年経った今、
改めて聴いて胸がキューンと痛くなりました。
時代を象徴するようにして生まれた曲も、
いい曲は時を越えて受け継がれてゆくものです、そう永遠にね。
この偉大な作曲家を、まさか私が司会者として送る事になろうとは
…夢にも思わなかった。

大変多くの参列者やマスコミでごった返す中、
音楽で綴られた無宗教葬が執り行われました。
式場内には、芸能界の大御所がズラーっと並び、私の緊張度もピーク。
さほど大勢着席できる式場内ではないのですが(260席程度)、
TVでよく見かける面々が並び、取材陣が陣取っている中での司会は、
異様な緊張感が走ります。

 

開式30秒前…20秒前…(えっ、えっ(>_<))…
そして10秒前…5秒前…カウントダウンするごとに、
緊張で心臓が口から飛び出すかと思った。
カウントが0になり同時に音楽が止まる、間髪置かずに「キュー」。
私の出番、開式の辞だ。

ここまで厳密にプロデュースされるのは、テレビ仕様ですよね。
今回の司会は、司会文言も細かにチェックされ
タイミングもすべて指示されている。
とにかく必要最小限に司会文言が抑えられているのだ。
その前提には、参列者で故人を知らない人は居ないでしょ…と言う訳。
それにクオリティの高いセレモニーほど司会文言は少ない…と井手は言う。
ナレーションも無く、気持ちのいいくらいさっぱりした司会文言でした。
すべて、プロダクションの窓口になっている担当者さんの指示だが、
その方が<シンプルイズベスト>でいいですね。
現場を仕切っているその担当者さんに、
「うちは優しい人ばかりだから、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
と慰められた。(情けない)
しかし、その言葉にどれだけ救われたかわからない。
仕事の出来る方は、業務だけでなく、その場の雰囲気や、
そこに携わる者の精神面まで気遣ってくれる。
本当に有難かった。

 

献花の時は故人の作曲された作品ばかりが流されました。
競馬のファンファーレやシャボン玉アワー・ズームイン朝のテーマ…etc。
「え~この曲も故人の作曲されたものだったんだ」
と改めて故人の偉大さを感じたりもした。
体でリズムを取ったり、小さい声で口ずさんでいる参列者もいらっしゃり
明るい雰囲気でのお別れの献花が延々と続く…。
また弔辞の中で参列者が笑う一幕もあり、湿っぽい感じは一切なかった。
サックスの献奏も、さすがプロと思わせる弔いのムードに溢れ素敵でした。

 

それから、最後のお別れの式場内。
表向きには、遺族・親族のお別れという事だったが、芸能人が居るわ居るわ。
コメットさんにピーナッツにアグネスにいや~役得だね。
通夜・葬儀で何十人の有名人を拝見できただろうか…!?
司会で緊張しながらも
「やっぱ、いしだあゆみさんは綺麗~」とか
「森進一さんは以外と華奢だわね」とか…
ミーハーな私は、キョロキョロしてしまう。
し・・・しかし・・な・なぜ!?
愛しの桑田圭祐様を見落としてしまったのだろう。(一生の不覚だ)
ワイドショーを見てびっくり。
通夜に来ていたらしいが、私の目は節穴じゃぁ~。
桑田さんの影も形も見ていない。(あぁ~ショック!)

 

さて、各局でTV放映がされていましたが、ご出棺のシーン。
まずは朝から表周りでの喪主様の挨拶の立ち位置決め。
挨拶をする時間に太陽がどこにあり、喪主様の顔に影が掛からないか
ということをまず一番配慮するらしい。(テレビ映りの関係だ)
そしてバックには遺族・親族が入るように、更にはサイドにブラスバンド、
そして進んできたお棺が画像のメインになるようにそれぞれの位置決めがされ、
上手く報道陣のカメラに納まるように立ち居地にガムテープが貼られていく。
(場見っていくわけですね)
まさにTVの撮影を考慮しての演出。(すごいわっ!)
葬儀当日の朝から60名前後のブラスバンドのリハーサルで、
音楽葬とはいえ、とても葬儀の現場とは思えない活気だった。

 

そして本番(お別れの後)
「真っ赤なスカーフ」を演奏する3人のトランペッターに先導され、後にお棺。
「真っ赤なスカーフ」の演奏が2分30秒なので、
それまでに式場内から玄関先に移動する。
そして喪主様の挨拶。(この間は、お棺は喪主様のそばで一時停止)
その挨拶終了と同時に総勢60名ものブラスバンドが生演奏する
「宇宙船艦ヤマト」に合わせてのお車へのご安置、そしてご出棺は壮大でした。
思い出の曲と演出の巧みさで、どこからともなく参列者から拍手が沸き起こり、
大拍手の中、「宇宙船艦ヤマト」と共に霊柩車が消えて行った。
きっとこの迫力と感動はその場にいた人でなければ味わえないでしょうね。
すっごい感動的でした。(なぜか涙が出た)
まぁ、私が説明するまでも無く、TVでご覧になった方も多いと思いますが…。

 

大きい葬儀の演出は、ブライダルをはるかにしのぎますね。
ブライダルは規模の違いだけで、内容的にはさほど変わりはありません。
しかし葬儀は、多種多様・・・ん~奥が深い。
芸能に携わる方々はスマートな演出の仕方を心得ていますね。(当たり前かぁ)
とても勉強になりました。
一般の葬儀ではここまでの演出はありませんが、
細かなところにも気を使う演出方法には学ぶべきところがたくさんありました。
ライトの使い方や次の進行に移る時の段取り。
皆さんも著名人の葬儀を見学に行くだけでも随分見方が変わり、
ご自分の担当葬儀に役立てられると思います。
私も出来るだけ見学に行こうかと…
(著名人の葬儀はファンも入れてくれるので、誰でも入れるみたいですからね)
あ~それにしてもやっと緊張から開放されたわ。ヽ(^。^)ノ
心臓に悪いっ。

 

<おまけ>
この葬儀社様は、社長を始め、落ち着きのあるスタッフで構成されている。
N社長は、約1年前に結婚されてから、久しぶりにお会いしたが
ますます貫禄が出て社長の風格も備わっていた。
幸せ太りでしょうかぁ~~!
大変お世話になりました。ありがとうございました。


<井手の割り込み>
音楽葬で思い出すのは、日野皓正さんのラッパ。
献奏でトランペットを吹くのに、かなりこだわっていらっしゃった。
トランペットは、少し音出しをしてから吹きたいのだ。
レコーディングでも、曲の途中から入るのはとても嫌がる人が多い。
いきなり違う音が出やすいのである。
ところが、葬儀では試し吹きが出来ない。
そして異様な悲しみの雰囲気の中での別な緊張感もある。
楽器はその人の心の動きを映し出すので説得するのに大変だった。
説得の秘訣は企業秘密です。

ところで、有名人のご葬儀では弔電も山ほど届く。
概ね、高倉健さんと森繁久弥さんをトップに数名に絞り込むことが多い。
今回も3通程度だったと聞いている。
それからマスコミ対策で、開式前に撮影・取材の時間を取る。
それも可能ならば、代表1社のみが望ましい。(現場が荒れるからね)
式中の録音は、出来れば主催者の音源から根分けして、
いい音を使ってもらった方が放送時の音声がきれいです。
また生放送のワイドショーのオープニングに合わせて、
ご出棺を調整することもありました。
大型葬になるほど、司会はシンプルを好まれる傾向にある…とまあ、
これ以外にも色々とコツはあるのですが、石川もいい経験をしました。
そしてエッセイには書けない面白話もたくさんあるのですが…。
機会があれば…いずれまた…。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年03月27日 00:13

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