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2006年05月10日

ホスピスへのお見舞い(加藤直美)

カテゴリー : MCエッセイ 七転八起

主人の30年来の友人が、末期ガンで入院している。
このGWには、その友人とゆっくりと話がしたくて主人と2人、
聖路加国際病院までお見舞いに行った。
先月までは内科病棟にいた。
しかしついこの間、緩和病棟(ホスピス)に移動したとのこと。
本人も覚悟の上のことだという。

肝臓から全身への転移があり、夫と見舞った時には意識混濁の状態だった。
モルヒネが投与されている。すでに話が出来ない状態だ。
こちらが話しかけることに頷くような、何か話したいような素振りを見せる。
まだ50代半ば・・・。まだまだ人生これからという時に・・・。
私たちも本当に悔しい。

サックスのミュージシャンとしての彼の人生は、それは密度の濃いものだった。
生涯独身だったが、ジャズミュージシャンとしては、
本当に恵まれた「昭和の時代」を音楽という伴侶と共に駆け抜けた。
お酒が大好きで、よく我が家の飲み会には顔を出してくれた。
飲むと少しだけクダを巻くのが玉にキズだったが、
それだけに面白い武勇伝もたくさんあるらしい。
夫は偶然に病室で出会った音楽仲間と、彼の色々な出来事を話していた。
病床の彼には聞こえるのか、時々唸るような声を上げる。
返事をしているような・・・「そんなことまで、こんな時に話すなよ・・・」
と言っているような・・・。

状態が悪くなってからは、お姉さんが付き添っている。
遠くから通っているらしいが、家族の愛を感じる。
末っ子だった彼は、兄姉の誰よりも先に、天国へ召されてしまう。
ご家族にとっても、それは辛いことだろう。

聖路加国際病院のホスピスは、一歩足を踏み込むだけで、
そのやさしくて暖かい環境が感じとれる。
患者様や家族が大切にされていると感じる。
全部が個室になっていて、彼の部屋では有線放送からジャズが流れていた。
明るい病室からは隅田川沿いのウォーターフロントが一望できる。
最高のロケーションだ。
日野原重明先生と偶然エレベーターでご一緒した。
小さくてやさしそうなおじいちゃんだった。
この身体から物凄いパワーを出しているなあ・・・と、しばし見とれてしまった。

病室には、代わるがわる友人達がやってくる。
こんなにも友達が多かったのか・・・とお姉さんは感激していた。
そして友人たちは、彼の耳元で「頑張れ」「頑張れ」と言っていた。
私たちだって彼には、1分、1秒長く生きて欲しい。
奇跡が起こるのならばもう一度、楽しく話をしたい。
大声で笑いながらお酒を飲みたい・・・。
しかし・・・もうここまで来て、どうやって頑張れというのだろうか・・・。

「ここまで、よく頑張って来たね」
「もういいよ」
「ゆっくりと、休んで・・・」
「お疲れ様・・・」
そう言ってやりたかったと、夫が、ぽつりとつぶやいた。

彼が吹くサックスは、とてもロマンティックで、素敵な音色だった。
出来ることならもう一度、その音を聞いてみたい。

投稿者 葬儀司会、葬儀接遇のMCプロデュース : 2006年05月10日 00:00

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